水産実験所・水産増養殖学研究室

水圏増養殖学の概要

 水圏生物科学専攻の一研究室として,水産増養殖学の教育,研究を水産実験所が担当している.現在のテーマは病気から身を守る仕組み,すなわち免疫学と,ゲノム進化および,発生・遺伝に関する研究が中心であり,いずれも全ゲノムが解読されたことで注目されるトラフグが主要な研究材料となっている.免疫研究においては,ゲノムデータベースを利用してすでに多くの免疫関連遺伝子を同定しており,in vivoの実験や,小型モデル魚では困難な白血球を用いたin vitroでの実験により機能の解析を進め,魚類免疫系の総合的な理解を目指している.他方,海産魚の飼育施設と技術とを駆使して,トラフグとクサフグの種間交雑第二世代を作出し,ゲノム情報を最大限に活用して作成した詳細なゲノム連鎖地図をもとに,種間差を規定する遺伝子の網羅的な連鎖解析を行っている.こうした遺伝子には,成長,耐病性,行動など,水産上有用な形質を支配するものも含まれており,新品種の開発にむけてのいわゆるゲノム育種も視野に入れた基礎研究を進めている.

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1. トラフグ免疫担当細胞とフローサイトメトリー解析
2. トラフグ連鎖地図の一例(ゲノム配列断片が張り付けられている)
3. トラフグ・クサフグ種間交雑第2世代(F2)の作出
4. トラフグ・クサフグF2に見られる極端な成長差
5. F2によるフグの種間差を支配する遺伝子の連鎖解析

主な研究テーマ

  • 魚類の免疫機構に関する研究
  • 魚類のゲノム進化と発生・遺伝に関する研究
  • トラフグのゲノム育種
  • 魚類の性決定機構

スタッフ

准教授 菊池 潔 [研究者データベース]  
助教 細谷 将 [研究者データベース]
助教 平瀬 祥太朗 [研究者データベース]

水産実験所の概要

 水産実験所は,浜名湖に囲まれた弁天島にある.海水,淡水が利用できる豊富な飼育実験施設と, 調査船等のフィールド研究施設とを備えて,水圏生物科学の教育・研究の実践の場となっており, 本学の教員,大学院生,学部学生はもとより,他機関の研究者にも門戸が開かれている. 面積20,000 ㎡の敷地に,研究棟,飼育実験棟,学生宿舎等計10棟が配置されており,屋内外合わせて100面以上, 最大100 ㎡までの飼育実験水槽があるほか,DNAシークエンサー,フローサイトメーター, 共焦点レーザー顕微鏡などの機器類,クリーンルーム,水質環境測定機器や,せりおらⅢ(3.0トン), すきいら(1.0トン)の2隻の調査船を備えている.

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6. 実習・調査に活躍するセリオラⅢ(定員25名)
7. 温度制御水槽設備

沿革

1936年 7月 愛知県知多郡旭村日長に新舞子実験所を設立
1937年 12月 愛知県渥美郡泉村伊川津に伊川津実験所を設立
1970年 4月 両施設を統合,静岡県浜名郡舞阪町(現,浜松市西区舞阪町)に移転
2000年 4月 大学院化に伴い,東京大学大学院農学生命科学研究科付属水産実験所となる.

水産実験所ホームページ

http://www.se.a.u-tokyo.ac.jp/japanese.html